2008年頃より急増した日本企業による海外M&Aの結果、海外子会社のポートフォリオが積みあがった日本企業が、「戦略の転換」や「選択と集中」により、ここへきて以前買収した海外子会社を売却する案件が増えてきています。国内でM&Aを重ねてきた企業についても同様です。昔は買収後うまくいかない子会社にエンドレスで資金と人材をつぎこんで泥沼にはまってしまいがちだったのですが、日本企業も習熟し、早めに見切りをつけて適正価格で他に売却することで傷を浅く抑えるテクニックを身に着けてきています。
売却案件での実務担当者の役割は受動的・限定的で、スムーズかつスピーディーに売却実行に持ち込むことだけが手腕発揮のポイントと誤解されていますが、売却案件アドバイスの歴史の長い欧米の一流法律事務所では、売手側に立つ場合のノウハウが蓄積されてきています。
本講義では、講師がAllen & Overyのパートナー時代にキリンによるグローバルでのアグリバイオ・ビジネスの売却案件を担当して以来、繰り返し売却案件を担当し修得してきた、売手側実務担当者が知っておくべき注意点とノウハウをご紹介します。
1.売却案件での失敗事例
日本企業の陥りがちな失敗パターンの数々を具体的に紹介。
2.売却手続の選択
相対交渉手続と比較したオークション手続の長所・短所とその実際。
3.売却対象会社マネジメント対策
売却は自分の職務外と考え、ともすれば買収者側に迎合しがちな対象会社マネジメントを、高値での売却実現のためいかに働かせるかの工夫。
4.ベンダー・デューデリジェンス
無駄と考えられがちなべンダー・デューデリジェンスが実は重要であること、その効果的な活用の仕方。
5.Letter of Intent
後日揉めがちなポイント。
6.株式売買契約交渉のポイントと交渉戦略
売買代金支払い確保の手段、責任限定、危険な競業避止規定等。
7.Disclosure letter作成の注意
売手のプロテクションのためのポイント。
8.売手側表明保証保険の活用
保険代位による保険会社からの求償は限定的で、売手にとってもメリット大。
〜質疑応答〜
【講師紹介】
あさひ法律事務所(現在の西村あさひ法律事務所)の中心的パートナーとして活躍した後、Freshfields Bruckhaus Deringer、Allen
& OveryでそれぞれM&A部門の責任パートナー(Allen & OveryではGlobal Corporate Boardのボードメンバー)を歴任した後、新時代の要請に柔軟に応えるべく2012年春に日比谷中田法律事務所を設立し、代表パートナーとして今に至る。34年間にわたり多数の国内外のM&A案件をアドバイスする。専門は、日本企業による海外企業の買収と日本の上場会社の買収。日比谷中田法律事務所はイギリスのCorporate
ITNL誌で2年連続Cross Border M&A Law Firm of the Year (2016)・(2017)に選ばれ、講師個人もイギリスのInternational
Advisory ExpertsでCross Border M&A Lawyer of the Year in Japan (2017)に選ばれるなど、特に海外メディアから高い評価を受けている。2018年3月よりキリンホールディングス社外監査役。
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